【ベルリン国際映画祭の歴代最優秀女優賞(銀熊賞)】日本人の受賞は?

ドイツの都市ベルリンで毎年2月に開催されるベルリン国際映画祭は、最高賞の金熊賞を始め、まざまな部門で優れた作品や俳優に賞が贈られています。

今回はその中でも、ベルリン国際映画祭の最優秀女優賞の歴代、日本人受賞者についてまとめてみました。

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ベルリン国際映画祭の歴代・最優秀女優賞一覧

1956-1965

開催年 受賞女優/国籍 作品名
1956 エルザ・マルティネッリ
/イタリア
Donatella
1957年 イヴォンヌ・ミッチェル
/イギリス
Woman In A Dressing Gown
1958年 アンナ・マニャーニ
/イタリア
野性の息吹き
1959年 シャーリー・マクレーン
/アメリカ
恋の売り込み作戦
1960年 ジュリエット・メニエル
/フランス
Kirmes
1961年 アンナ・カリーナ
/フランス
女は女である
1962年 リタ・ガム
/アメリカ
ヴィヴェカ・リンドフォース
/スウェーデン
No Exit
1963年 ビビ・アンデショーン
/スウェーデン
Älskarinnan
1964年 左幸子
/日本
にっぽん昆虫記
/彼女と彼
1965年 マドハール・ジャフリー
/インド
インドのシェイクスピア
1964年には、コールガール組織の元締になっていく女性を演じた左幸子さんが受賞しているね。
にっぽん昆虫記を撮った今村昌平監督は、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを2度も受賞したスゴイ人なんだ。

1966-1974年

開催年 受賞女優/国籍 作品名
1966年 ローラ・オルブライト
/アメリカ
スター誕生の夢
1967年 イーディス・エヴァンス
/イギリス
哀愁の旅路
1968年 ステファーヌ・オードラン
/フランス
女鹿
1969年 該当なし
1970年
1971年 シモーヌ・シニョレ
/フランス
Le Chat
シャーリー・マクレーン
/アメリカ
Desperate Characters
1972年 エリザベス・テイラー
/アメリカ
Hammersmith Is Out
1973年 該当なし
1974年
エリザベス・テイラーは偉大な俳優ランキングをすれば、必ず上位に入ってくるアメリカでは特別な女優さんみたいだよ。
スキャンダルに注目されがちだけど、2度もアカデミー賞を受賞している演技も素晴らしい女優なんだ。

1975-1983

開催年 受賞女優/国籍 作品名
1975年 田中絹代
/日本
サンダカン八番娼館 望郷
1976年 ヤドヴィガ・バランスカ
/ポーランド
Noce i dnie
1977年 リリー・トムリン
/アメリカ
レイト・ショー
1978年 ジーナ・ローランズ
/アメリカ
オープニング・ナイト
1979年 ハンナ・シグラ
/ドイツ
マリア・ブラウンの結婚
1980年 レナーテ・クレスナー
/ドイツ
ソロシンガー
1981年 バーバラ・グラボフスカ
/ポーランド
Goraczka
1982年 カトリン・ザース
/ドイツ
Bürgschaft für ein Jahr
1983年 エフゲニヤ・グルシェンコ
/ソビエト連邦
Wljubljon po sobstvennomu zhelaniju
1975年には田中絹代さんが日本人では2人目の受賞をしているわ。
田中絹代さんは日本の俳優として初めて、ハリウッドを見学した人なんだ。自分を美しく魅せる芝居ではなく、魂が乗り移ったかのような生々しい演技が評価されたんだ。

1984-1993

開催年 受賞女優/国籍 作品名
1984年 インナ・チュリコワ
/ソビエト連邦
ワッサ
1985年 ジョー・ケネディ
/オーストラリア
Wrong World
1986年 シャルロット・ヴァランドレイ
/フランス
ルージュ・ベーゼ/15才の恋
マルセリア・カルタショ
/ブラジル
A hora da estrela
1987年 アナ・ベアトリス・ノグエイラ
/ブラジル
Vera
1988年 ホリー・ハンター
/アメリカ
ブロードキャスト・ニュース
1989年 イザベル・アジャーニ
/フランス
カミーユ・クローデル
1990年 該当なし (個人賞と共演賞が授与された)
1991年 ビクトリア・アブリル
/スペイン
アマンテス/愛人
1992年 マギー・チャン
/香港
ロアン・リンユィ 阮玲玉
1993年 ミシェル・ファイファー
/アメリカ
ラブ・フィールド
この年代の作品はラブストーリーやコメディタッチの作品もあるのね。
社会派作品が特徴のベルリン国際映画祭だったんだけど、1980年にプロデューサーの意向でハリウッド志向の作品も取り入れだしたんだ。

1994-2003

開催年 受賞女優/国籍 作品名
1994年 クリシー・ロック
/イングランド
レディバード・レディバード
1995年 ジョセフィン・シャオ
/香港
女人、四十。
1996年 アヌーク・グランベール
/フランス
私の男
1997年 ジュリエット・ビノシュ
/フランス
イングリッシュ・ペイシェント
1998年 フェルナンダ・モンテネグロ
/ブラジル
セントラル・ステーション
1999年 ユリアーネ・ケーラー
/ドイツ
マリア・シュラーダー
/ドイツ
Aimée und Jaguar
2000年 ビビアナ・ベグロー
/ドイツ
ナディヤ・ウール
/ドイツ
Die Stille nach dem Schuß
2001年 ケリー・フォックス
/ニュージーランド
インティマシー/親密
2002年 ハル・ベリー
/アメリカ
チョコレート
2003年 メリル・ストリープ
/アメリカ
ニコール・キッドマン
/オーストラリア
ジュリアン・ムーア
/アメリカ
めぐりあう時間たち
2002年『チョコレート』のハル・ベリーは、泣き狂った演技が圧巻だったね。
この作品でハルベリーは有色人種として初めてアカデミー主演女優賞受賞したんだ。人種差別を扱った作品だけに感慨深いね。

2004-2013

開催年 受賞女優/国籍 作品名
2004年 シャーリーズ・セロン
/南アフリカ
モンスター
カタリーナ・サンディノ・モレノ
/コロンビア
そして、ひと粒のひかり
2005年 ユリア・イェンチ
/ドイツ
白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々
2006年 サンドラ・ヒューラー
/ドイツ
Requiem
2007年 ニーナ・ホス
/ドイツ
イェラ
2008年 サリー・ホーキンス
/イギリス
ハッピー・ゴー・ラッキー
2009年 ビルギット・ミニヒマイアー
/オーストリア
恋愛社会学のススメ
2010年 寺島しのぶ
/日本
キャタピラー
2011年 レイラ・ハタミ、サレー・バヤト
サリナ・ファルハーディー、キミア・ホセイニ
/イラン
別離
2012年 レイチェル・ムワンザ
/コンゴ共和国
魔女と呼ばれた少女
2013年 パウリナ・ガルシア
/チリ
グロリアの青春
『キャタピラー』で、戦争で四肢をなくした夫の世話をし、やがて壊れていく妻を演じた寺島しのぶさんは凄かったな・・・。
寺島さんの受賞は、田中絹代から35年ぶりの快挙として話題になったよね。この演技が評価され、アメリカCNNの「まだ世界的に名前は売れていないが、演技力のある日本の俳優7人」の一人にも選ばれているよ。

2014-

開催年 受賞女優/国籍 作品名
2014年 黒木華
/日本
小さいおうち
2015年 シャーロット・ランプリング
/イギリス
さざなみ
2016年 トリーヌ・ディルホム
/デンマーク
The Commune
2017年 キム・ミニ
/韓国
夜の浜辺でひとり
2018年 アナ・ブラン
/フランス
相続人
2019年 ヨン・メイ
/中国
地久天長(さらば、息子よ)
2020年
2014年『小さいおうち』の黒木華さんが受賞したときの着物姿かわいかったなぁ。
『小さいおうち』主役の松たかこさんの演技も素晴らしかったのだけど、「彼女の演技力は群を抜いていた」という理由で、準主役ながら黒木華さんが栄誉に輝いたんだ。
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ベルリン国際映画祭の特徴

ベルリン国際映画祭はカンヌ、ヴェネツィアと並ぶ世界三大映画祭に位置づけられています。

まずは、ベルリン国際映画祭について簡単にご説明します。

ベルリン国際映画祭とは?

毎年2月に行われるベルリン国際映画祭は、ベルリンという大都市で行われるだけあり50万人を超える観客が訪れます。

東京国際映画祭が6万人なので、その規模の大きさがうかがえますね。

400本以上を超える作品が上映され、興行的には成功していない良作や新人などの発掘の場となっています。

ベルリン映画祭の特徴

世界三大映画祭それぞれの特徴として、

■ベルリン・・・芸術性、社会派
■ヴェネツィア・・・社会性
■カンヌ・・・商業性、独自性
と言われています。
冷戦下に西ベルリンで始まった映画祭で、政治に翻弄された地域ということから社会派と言われる作品が多く集まるようになっていきました。
華やかさにおいてはカンヌやベネチアよりやや劣りますが、企画上映やテーマに沿った作品の上映は充実していると言われています。
近年では、ハリウッド的な作品も評価の対象になっていますが、難民問題や政治的に抑圧されている地域を描いた作品も多く、ベルリンらしさが戻った印象があります。

ベルリン映画祭の部門や賞

部門

コンペティション部門・・・世界中から優秀な作品があつめられ、最優秀賞である金熊賞などが授与される。

パノラマ部門・・・コンペティション部門からは外れた優れた作品を上映。後に、有名になる監督のデビュー作やドキュメンタリー映画が上映されることも多い。テーマや質の幅が広いのも特徴

フォーラム部門・・・若手(新人)監督の作品が多く上映される。アヴァンギャルド映画、実験映画、ルポルタージュなどの過去に埋もれた作品に焦点をあてて上映することも多い。

レトロスペクティブ部門・・・ドイツ・キネマテークの運営で行われ、毎年の決められたテーマ、特定の監督、過去の優れた作品を上映する。

子ども映画部門 ・・・4歳以上の子どもを対象にした映画部門(Kplus)は11人の子どもの審査員によって最優秀賞が選ばれる、14歳以上の青少年を対象にした映画部門(14plus)は7人の子どもの審査員によって最優秀賞が選ばれる。

金熊賞
金熊名誉賞
銀熊賞 審査員グランプリ
監督賞
男優賞
女優賞
脚本賞
音楽賞※2007年廃止
芸術貢献賞
アルフレッド・バウアー賞 ー新しい視点を示した作品
新人監督賞
ドキュメンタリー最優秀作品賞
テディ賞ーLGBTを扱った映画に贈られる。
パノラマ観客賞
クリスタル・ベアー4歳以上の子どもを対象にした作品、14歳以上の青少年を対象にした作品に贈られる。
シューティング・スター賞ー 欧州の若手俳優・女優に贈られる。

なぜ熊(クマ)の名前の賞?

金熊賞、銀熊賞、テディ賞など、ベルリン国際映画祭はクマにちなんだ名前の賞があります。

それは、クマがベルリン市の象徴で“ベルリン・ベア”として親しまれていることに由来しています。

なぜクマがベルリンを象徴するようになったのかは、諸説ありますがブランデンブルク辺境伯領の創設者、アルブレヒト一世(1100年頃~1170年)のニックネームが“アルブレヒト熊公”だったという説が有力です。

トロフィーも後ろ足で立つクマのデザインとなっています。

ベルリン国際映画祭最優秀女優賞を獲得した日本人

ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した日本人は4人います。

■1963年『にっぽん昆虫記』左幸子

■1975年『サンダカン八番娼館 望郷』田中絹代

■2010年『キャタピラー』寺島しのぶ

■2014年『小さいおうち』黒木華

日本人で初めて受賞した日本人女優は左幸子さん、そして田中絹代さんは元からゆきさんの老婆を演じ65歳で受賞。

その35年後に寺島しのぶさん、そして4人の中では最年少の23歳で黒木華さんが受賞しました。

日本映画は私小説的で規模も小さめの作品が多く、世界的なヒットにつながりにくいですが、良質な作品も多くあります。

そんな作品・役者が海外できちんと評価されることは、とても喜ばしいことですね。

次に名前を刻む女優さんは誰なのか、非常に楽しみです。

最後に

ベルリン国際芸術祭で最優秀女優賞を歴代受賞した方をまとめさせて頂きました。

名だたる往年の名女優に交じって、日本人が4人もいたことに驚きました。

ぜひ次の2月の行われるベルリン国際映画祭では、女優賞だけでなく他の賞にも注目してみて下さいね。

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